【 目 次 】

▶︎Ⅰ.賃金や労働条件は労働組合の交渉で決まります
▶︎Ⅱ.公務員の労働基本権は不当にも制限されています
▶︎Ⅲ.「代償機関」としての人事院・人事委員会・公平委員会
▶︎Ⅳ.賃金決定の原則と基準
▶︎Ⅴ.「賃金抑制装置」に成り下がった人事院と人事委員会
▶︎Ⅵ.たたかわなければもっと酷くなります

 

Ⅰ.賃金や労働条件は労働組合の交渉で決まります

労働者には、憲法28条に「勤労者の団結する権利および団体交渉その他団体行動する権利」により、労働組合の結成(団結権)、団体交渉(団体交渉権)、スト権の行使(団体行動権)のいわゆる「労働基本権(労働三権)」が認められています。労働組合はスト権を背景にした団体交渉によって、賃金や労働条件について、使用者との間で「労働協約」を書面で結ぶことができます。(組合の組織率は問いません。少数組合であっても独自の労働協約を締結することは可能)

 労働者の賃金や労働条件は、「労働契約」や「就業規則」でも定めることは可能ですが、使用者が一方的に作成・変更できる「就業規則」や、使用者と個々の弱い立場での労働者が結ぶ「労働契約」よりも、労働者の団体である労働組合が使用者と結んだ「労働協約」が優先します。ここに、労働組合の意義があります。

 

Ⅱ.公務員の労働基本権は不当にも制限されています

ところが、私たち地方公務員は、「地方公務員法(地公法)」により、争議権(スト権)が全面禁止されるなど、不当な制限を受けています。

  民間労働者 公務員(非現業)
労働組合の結成
労働協約の締結 ×
争議権(スト権) ×
団体交渉権 △(制限)

 

 

Ⅲ.「代償機関」としての人事院・人事委員会・公平委員会

このように労働基本権が制約されているもとでは、使用者と労働者が対等とはいえません。そのため、その「代償機関」として、国家公務員には人事院が、地方公務員には人事委員会(都道府県と政令指定都市)や公平委員会(市町村)がつくられ、公務員賃金はその勧告に基づいて、法律や条例で決めることになっています。

 

Ⅳ.賃金決定の原則と基準

それでは県人事委員会は何を根拠に、私たちの賃金や労働条件について、知事と県議会に勧告するのでしょうか? 地公法では次のように記されています。

○平等取り扱いの原則(第13条)

すべて国民は、この法律の適用について、平等に取り扱われなければならず、人種、信条、性別、社会的身分若しくは門地によつて、・・・・政治的意見若しくは政治的所属関係によつて差別されてはならない。

○情勢適応の原則(第14条)

地方公共団体は、この法律に基いて定められた給与、勤務時間その他の勤務条件が社会一般の情勢に適応するように、随時、適当な措置を講じなければならない。

○職務給の原則(第24条)

職員の給与は、その職務と責任に応ずるものでなければならない。

○給与・勤務時間・その他の勤務条件の根本基準(第24条3)

職員の給与は、生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない。

○条例主義(第24条6)

職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定める。

つまり人事委員会は、県職員の賃金や労働条件が社会一般の情勢に適応しているかどうかについて、毎年4月1日時点の、①生計費、②人事院勧告(国)と他自治体の賃金等、③民間企業の賃金等を調べます。

ですから、理論上は公務員賃金は民間企業の労働者の賃金等と同じです。「公務員は恵まれている」との批判は当たりません。

 

Ⅴ.「賃金抑制装置」に成り下がった人事院と人事委員会

しかし現状は、人事院や人事委員会は、国や県当局の圧力を受けて、低賃金政策を後押しする役割を果たしています。 一つは、「国準拠」や「民間準拠」が強調される一方で、「生計費」(私たちの生活実態)が軽視されていることです。もうひとつは、民間との比較の「ものさし」を一方的に変えるなどを平気で行っています。

【「ものさし」を変えて給料を下げる手法とは 】

・比較対象の民間事業所を100人以上→50人以上に

・2006年(平成18年)の「給与構造改革」それまでは全国平均で官民比較をしてきたが、民間給与が低い東北・北海道の水準に給料表を引き下げ、それより高い地域は「地域手当」で積み増す方法に変更。これにより給料表は平均で5.8%、50代では7%をこえて削減されました。

・2015年(平成25年)の「給与制度の総合的見直し」 民間給与が「特に低い12県」の水準まで給料表を引き下げる。給料表は平均で2.3%、50代は3%程度削減されました。

 

これではとても代償機関とは言えません。「公務員は恵まれている」どころではありません。したがって、私たちの基本要求は人勧体制の打破であり、スト権や労働協約締結権をとりもどして対等の労使関係をつくることです。

 

Ⅵ.たたかわなければもっと酷くなります

そんな人事院や人事委員会でも、私たちの賃金や労働条件を改善する勧告を出させなければなりません。そこで組合は県下の教職員の生活実態や労働実態を伝え、勧告に反映させるために、人事委員会と交渉します。職場で署名を集めて提出します。

交渉しなければ、人事委員会は県当局の言いなりになってしまいます。滋賀県は全国で12番目ぐらいの賃金水準なので、交渉無しで国並みの勧告を出されたら、賃下げは避けられません。

10月中旬に勧告が出されると、それを土台に組合と県当局は「賃金確定交渉」を行います。この交渉には知事部局の事務方トップである総務部長や、私たちの任命権者である教育長が出席します。人事委員会勧告で扱わない「臨時教職員問題」や「超勤縮減問題」なども交渉課題となります。

こうした経過を経て、県関係職員(教職員、行政職員、警察職員、約2万人)の賃金・勤務条件が決まるのです。